期待の新人作家

ショートショート・短編小説

俺は推理小説家。だけど小説を書いたことはない。

なぜかって?

実は俺の親父は有名な推理小説家だったんだけど去年死んでしまったんだ。

そのときに未発表の原稿をたくさん残してくれた。

「俺が死んだらこれをオマエの名前で発表しろ」と言ってくれたんだ。

現金を相続すれば税金が掛かってしまうけれどこの方法なら無駄な税金を払わずに済むからね。

親父の言ったとおりにしたら、デビュー作がいきなり大ヒットしたわけ。

当然だよね。売れっ子作家だった親父が残してくれた原稿なんだから面白いに決まってる。

その後も俺は期待の大型新人としていくつかの小説を発表した。

そしてそのうちの1つが「江戸川乱歩賞」を受賞したんだ。

推理小説家ならみんな欲しがる賞だ。

その授賞式後の記者会見で俺はやらしかしてしまった。

ある記者が「この小説の見所はどこですか?」と質問をしてきた。

だから俺は言ったよ。

「まだ読んでないので分かりません」とね。

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