怪盗コウモリ男

ショートショート・短編小説

最近この街では絵画や宝石などの盗難が相次いで発生している。

犯人はコウモリ男である。

盗みに入った美術館や宝石店に「コウモリ男参上」というカードを残していくのでこう呼ばれるようになった。

ある日、警察に「本日、ABC宝石店のピンクダイアをいただく コウモリ男」という犯行予告が送られてきた。

警察はさっそくABC宝石店へ人員を配置することにした。

相手に気づかれないように、宝石店の向かいにあるマンションの部屋から張り込みをすることにした。

朝から張り込みをしていたがコウモリ男が現れることはなかった。やがて店の閉店時間となった。

「どうやら閉店後を狙うつもりらしいな」と一人の刑事が言った。

店の中では従業員たちが閉店のための後片付けを行っていた。

従業員たちは片付けが終わると、刑事たちが張り込みをしている部屋へとやってきた。

変わった様子が無かったか聞くために刑事が呼んでいたのである。

部屋には3人の従業員がやってきた。

刑事が「女性がもう1人いたはずですが、どうしましたか?」と聞いた。

すると従業員の1人が不思議そうな顔をしてこう言った。

「あの人は警察の方ですよね?警備のために私たちと同じ制服を着て、従業員のフリをしていると言っていましたよ。まだ店内で警備をしていますよ」

刑事たちが一斉に窓から宝石店を覗くと、そこには店の従業員と同じ服装をした女性がいた。

その女性はショーケースを開けるとピンクダイアを取り出し、代わりにカードを置いた。

そのカードには「コウモリ男参上」と書いてあった。

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