消費者を騙す方法

ショートショート・短編小説

駅のホームの売店の前に自動販売機が設置されていた。

どの飲み物も100円で販売されている。お茶もジュースもすべて100円である。

駅のホームの中ということもあり、売れ行きはまずまずであった。

しかしお汁粉(おしるこ)だけはほとんど売れることがなかった。

もともと自動販売機でお汁粉を飲もうと思う人は少ないので仕方がないが、あまりにも売れないので売店の店長はお汁粉だけ80円で販売することにした。

それでも売れ行きはいまいちだった。

そこに一人の経営コンサルタントが現れた。

彼は店長から話を聞くと、勝手にお汁粉の値段プレートを100円に戻してしまった。

そして自動販売機に100円を入れてお汁粉のボタンを押した。

値段プレートを取り替えただけで、中身の設定は変えていないのでお釣口から20円が戻ってくる。

すると経営コンサルタントは周りの客に聞こえるように「この自動販売機はお汁粉の設定を間違えてるから20円得したぞ」と言った。

それを近くで聞いていた客は自動販売機に100円を入れてお汁粉のボタンを押した。

やはり20円が戻ってきた。

それを見ていた他の客も同じようにお汁粉を買った。

やがてこの自動販売機は”お汁粉を買うと20円得する自販機”という噂が広まり、みんながお汁粉を買うようになった。

いつしかお汁粉が一番人気となった。

経営コンサルタントは売店の店長に言った。

「消費者を騙すのは簡単でしょ?」と。

そのやり取りをコッソリ見ていたデパートの経営者があることを閃いた。

「そうだ!商品の値段を高くしてその分をポイントとして還元すれば良いのだ!」

これが世の中にポイントカードが広まることになった起源である。(嘘)

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