5分前出社

ショートショート・短編小説

「俺が新人の頃はもっと早く出社していたぞ」

いつもギリギリに出社してくる部下に上司が言った。

「そうは言っても朝は何かと忙しくて……」

部下は言い訳をするように答えた。

上司はさらに言う。

「5分でいいから早く来てみろ。朝の5分というのは昼間の1時間くらいの価値があるんだ。その時間に集中して仕事をすることで効率も上がるというものだ」

「努力してみます」

部下は自信なさそうに答えた。

翌日、部下はなんとか始業の5分前に会社に到着することが出来た。

上司も満足そうだった。

夕方になり部下が帰ろうとしたので上司は言った。

「おいまだ、定時まで1時間あるだろ?」

「でも僕は今朝、5分前に出社しましたから。朝の5分は昼の1時間の価値があるんですよね」

そう言って部下はさっさと帰っていった。

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