一人の少年が難病にかかり臓器移植が必要となりました。
少年の両親がドナーとなることを申し出ましたが適合しないことが分かりました。
絶望した両親の前に悪魔が現れました。
「お前たちの願いを一つだけ叶えてやろう」
父親は言いました。
「息子を助けてください」
悪魔は「よろしい。その代わりお前の死と引き換えだ」と条件を出しました。
父親は「息子が死んでしまったら生きていても意味がありません。喜んでその条件を引き受けます」と言いました。
悪魔の姿が見えなくなると病室に医者が駆け込んできました。
「適合するドナーが見つかりました」
移植手術は無事に成功し息子の命は助かりました。
それから10年が経ちました。
少年も両親も元気に生きています。
それから100年が経ちました。
少年と母親は死にました。
父親は元気に生きています。
【解説】
「死と引き換えに」というのは「命と引き換えに」という意味ではありません。
「死ぬこと」と引き換えにということです。そのため父親はいつまでも死ぬことが出来なくなったのです。